「Fin de semana」
ライター・川北真由美



第1回 「バルセロナへやって来た」

La Vida *生活
<スペインでの銀行口座の開き方>

スペインには数多くの銀行がある。大手の銀行が次々と合併している日本と比べると、まるでバブル絶頂期とも思える様相である(決してそうではないが)。

私の住む街、バルセロナのSant Andreuでも、銀行の数が多いということ以上に驚かされるのが、同じ銀行が歩いて5秒くらいの間隔で点在していること。それこそ○○銀行 12番地支店、13番地支店…という具合なのだ。一つの支店には大抵、1〜2台のATM(24時間営業)と窓口(デスクが3つくらい)があり、それほど手際がよいとは思えない仕事ぶりでも長蛇の列ができないのは、各支店にお客が分散しているからなのだろう。

数人のスペイン人から薦められたLa Caixa(発音はラ・カイシャ。それこそ「ザ・会社」ってか)という銀行に普通預金口座(Cuenta Ahorros)を開くことにした。ここは他の銀行と違い、口座維持費が月々2.4ユーロ(約280円)かかってしまうが、街中でも一番支店が多い便利な銀行なのだ。

外国人だからといって戸惑うことはない。窓口に足を運び、口座を開きたいといえ快くSiと答えてくれる。必要なモノはパスポートのみ。日本とスペインでの住所を伝えれば、すぐに通帳が発行される。希望すればキャッシュカードももらえるし、もっと驚くのが、このカードには頼みもしないのに、クレジット機能までついてくるのだ(それもVISA)。思い起こせば、会社を退職して以来、数々のカード会社に申請を却下された私。いつ「年収は?」と聞かれるのかとびくついていたがそんな心配も無用であった。

カードの表には140種以上もの中から選べるスペインの美しい風景写真をつけてくれる。窓口の女の子が私に薦めてくれたのは、そんなつまらない(彼女曰く)風景写真より、ピンクの背景にお花が書いてあるもの。きっと私の風貌を見て、そんな乙女チックジャパンをイメージしたのだろう。なんて素直な心を持った人なのだ。

またまたスペイン人が身近に感じられた一時であった。



El Viaje*誘われて一人旅

バルセロナからイタリアのミラノへ。

隣の又となりの国、飛行機で行けば1時間30分ほどで着いてしまう近さだが、のんびり寝台列車(スペイン国鉄『RENFE』)に揺られ13時間の旅に出た。

列車はすべて座席指定、1人あるいは2人で一部屋を使うリッチなコンパートメントから、4人の相部屋、そして普通座席までと、予算に併せた選択ができる。1週間に3本ほどしか運行しないこの列車は2週間前にはほぼ満席となるため、現地で突然乗車することは難しい。しかし、出国前にRENFEの日本総代理店(プレステージインターナショナル:TEL03-5354-7820)に連絡すれば、発券手数料2,000円のみで、現地価格で予約できるので利用してみるのもいい。

とはいえ「世界の車窓から」気分で乗車しても、発車は行きも帰りも夜8時過ぎの夜行列車。車窓の眺めはハッキリ言って何も見えない。ほとんど寝るだけといってしまえば味気ないが、楽しみは、乗り合わせた乗客との会話。たとえつたない語学力でも話し始めるとなんとなく通じてしまうから不思議だ。


★写真は普通座席。13時間はちょっと過酷かも

次回は、高校時代の同級生でイラストレータ、壁谷芙扶とのミラノでの劇的再会をお届けします。


El Idioma*草の根スペイン語講座

Palillo(バリージョ)

スペイン語でお箸のことを、Palillosという。しかし、この単語、実は爪楊枝、ドラムのスティック、フラメンコのカスタネット(アンダルシア地方)などの呼称にも使われる。つまり、木製の細長い道具はすべてPalilloとまとめているようなのだ。

だがしか〜し、私はココで声を大にして言いたい。「お箸だけは別の名前で呼んでくれ」。だってお箸の国の人だもの。

というわけで、今後私は「日本人はご飯を食べるとき『Ohashi』を使いま〜す」と言い続けよう。そしていつの日か、その言葉がWalkmanのように市民権を得て、スペイン全土に拡がっていくことを密かにたくらんでいるのだ。



第1回 「バルセロナへやって来た」
第2回 「狙え、スペインの梨本勝!」
第3回 「スペインの夏休み 」

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