「おばさん」
絵本作家・かべやふよう



第3回 「ある日、英会話学校で」

私の通っている英会話学校は新宿にあります。
昼間、ここに通ってくる人は、ほとんどが主婦かリストラ後の中年の方、定年退職後の方ばかりです。よって、私のような若者(ということになる)は、ものすごーく少なく、友だちはできにくいです。
だって、話題が孫の話とか、庭の植木の話なんだもの。
ディスカッション好きの先生のある日の質問は
「1日だけ神様になれるとしたら、何したい?」というもの。
4、5人いたおばさま方の口はいきなりすごい速さで動き出し、「困ったわー」と真剣に眉間にしわを寄せて、手を口に持っていく例のポーズをとっています。
「OK、OK、ワン・パーソン(ひとりずつ)!」と、先生。
端にいたオバサマA
「南の島に家を買って、ビキニ着る毎日がいい」

次のオバサマB
「時間をもどすわ、20年分。そして、しわをなくす」

オバサンC
「うーん、一日だけなんて、つらいわね。でも、息子を大学に入れた後、自分も女子大生になって、プレイガールになりたい」

オバサンD「スターウォーズに出る」
先生「え、何の役?」D「ライア姫よ!」
つまりA、B、C、Dはみんな同じことを願っているわけです。
若くなりたい=容姿が。
そう、これは女にとってはとても大事な問題。見かけで人生は違ってくると私は思っている。ほどよくいい、のがいいの。
でも、男の外人の先生にとっては、今イチぴんとこないらしいのです。インテリジェンスが感じられる答えじゃあないし。
最後に「アナタは?」と聞かれ、「No ! Tax 」と叫んだ私。
「オーッ、それはいい、それはいい」と今度は、何でこんなに税金が高いのか? という話題に移っていきます。
私がいったいいつ英語がしゃべれるようになるか、まったく判らないけれど、でもね、でも、こうゆう会話を、ものすごいカタコト英語とジェスチャーでやってるのって、これ " 生きた英語 " じゃあないの?自分の意見あってこそのコミュニケーションだもの。
今日も今から学校です。最近、とてもかわいい先生が来たので、授業に身が入らなくて困ります。
じーっと見上げている私に、先生は「ナオコ(私の本名)、判った?」と優しく見つめ返してくれる。
まわりがオバサンで、よかったわー、とちょっと思います。





第1回 「眠りの居間では...」
第2回 「あのときの雨」
第3回 「ある日、英会話学校で」
第4回 「2002年・私の重大ニュース」

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